坂本龍一が、生涯を通じて追求したのは、異なる領域の横断と接合という思想である。
坂本龍一の作品には、定まったスタイルがないと言われる。しかし、初期から晩年までの作品を通して聞き直してみると、一貫した根底にある思想を理解できる。
YMOにおける人と機械、アコースティックと電子機器。80~90年代のクラッシック音楽とポピュラー音楽。「戦場のメーリークリスマス」から始まり晩年まで継続された映画音楽の制作を通した映像と音楽。晩年の音楽・音・ノイズ。その他、政治との関わりなど。
それぞれの年代で、異なる領域を横断し、既存の領域に他分野の異物を持ち込み、接合しようとした点で一貫している。
そして、亡くなった今も、その活動は継続している。
今回公開された自身の葬儀で流すプレイリストや闘病生活の記録、死後も続けられるSNSアカウントの更新も、生前本人がデザインしたものだろう。
生涯通じて追及してきた思想に基づき、生と死の横断と接合という最後の作品を作り出そうとしている。