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非可逆的時間の世界を捨象する<狭義の経済学>

こうして市場経済の自律的社会では、生産は消費を前提し、消費はまた生産を前提する。経済事象はすべて繰り返すものとなっている。もっぱら商品形態を通して可逆性の世界である。市場経済に登場する人間は、つねに可逆的時間の中でビジネスを処理する仕組みとなっている。近代経済学を代表する新古典派理論においても、市場を中心に経済取引が、週単位で毎週繰り返すものと想定されているのは、当然のことである。資本の回転循環の世界に他ならない。<狭義の経済学>は、商品経済又は市場経済の対象とすることによって、実は非可逆的時間の世界を捨象している。だがこのことによって理論体系の完結性が保証されるものになっているといってもよいのである。

玉野井芳郎『エコノミーとエコロジー』p22

『「世界史の構造」を読む』

日本の経済成長は止まっている。利潤率が低下したままです。高齢化・少子化などの問題が深刻になっている。だから、日本人は没落感を持っています。一方、中国・インドでは高度成長が続いている。

だから、日本人はそれに脅威を感じています。しかし、中国・インドでもまもなく、経済成長は終わります。そうなると、世界資本主義にとって、フロンティアがなくなる。アフリカが最後のフロンティアになるかも知れませんが、アフリカでももう経済成長が始まっています。だから、日本経済が衰退するのは当たり前で、日本人はむしろ、今後にどこでも起こる問題を世界で最初に体験しているのだと思えばよいのです。世界資本主義そのものが没落するのだから。

『「世界史の構造」を読む』p364