汚染地域内に居住する人々のための放射線防護線量レベルについて

「福島県内の学校等の校舎・校庭等の利用判断における暫定的考え方について」
(文部科学省)

文部科学省が学校での利用判断における基準を20mSv/年としたことに対して、批判が集っている。
内閣官房参与 小佐古敏荘 辞任
【原発】「子供の許容被ばく線量高すぎる」と疑問
子どもの屋外許容線量、緩い基準に厳しい批判
「福島県内の学校等の校舎・校庭等の利用判断における暫定的考え方について」に関する会長声明(日弁連会長声明)
審議2時間で「妥当」判断 原子力安全委、学校基準で

文部科学省が参考にしたというICRP(国際放射線防護委員会)が示している資料には、以下のように書かれているが、この文言をそのまま読んでも、被ばくによる発ガン率が高い子供に対する基準として適切とはいえないだろう。

ICRP勧告日本語版シリーズ「緊急時被ばく状況における人々に対する防護のための委員会勧告の適用(仮題)」(p11総括(O))(社団法人日本アイソトープ協会)

(O)汚染地域内に居住する人々の防護の最適化のための参考レベルは、この被ばく状況区分に対処するために、Publication103(ICRP,2007)で勧告された1~20mSvの範囲の下方部分から選定すべきであることを勧告する。過去の経験により、長期の事故後の状況における最適化のプロセスを制約するために用いられる代表的な値は1mSv/年であることが示されている。国の当局は、現地の一般状況を考慮に入れ、また状況を漸進的に改善するために中間的な参考レベルを採用するよう全体の復興プログラムのタイミングをうまく使ってもよい。

また、このICPRの基準そのものに対しても、以下のような反論がある。

公衆の放射線防護レベルの緩和についての国際放射線防護委員会ICRPの忠告(3月21日)について
九州大学教授・副学長 吉岡斉(よしおか・ひとし)

国際放射線防護委員会ICRPは3月21日、Claire Cousins議長らの名で、およびChristpher Clement科学事務局長の連名で、福島原発震災における放射線防護レベルの緩和に関するコメントを発表した。その骨子は、緊急時の放射線防護の「参考 レベル」を20~100mSvとし、また事故終息後の汚染地域からの退去の「参考レベル」を1~20mSvとすることを忠告recommend する、というものである。

日本の放射線防護関係者の中には、それを支持する者もいると聞く。しかし筆者はそれに賛成しがたい。筆者はICRPによる放射線の危険度(リスクと表現 する者もいる)の見積りが過小評価であると思っているが、それについて今回議論する気はない。かりそめにICRPの評価が妥当だとしても、今回の忠告を日 本政府が受け入れることは賢明ではないというのが筆者の意見である。

以下は、吉岡氏が批判する3/21のICRPによる放射線防護レベルの緩和について伝える記事。

福島原発周辺住民の放射線量緩和を…ICRP 2011年3月27日21時15分 読売新聞)

現在の一般の年間許容量は1ミリ・シーベルトだが、ICRPは、2007年に勧告した緊急事態発生時の一時的な緩和基準が今回適用できると判断した。同勧告では、放射性物質の汚染地域に一般住民が居住する場合、20~100ミリ・シーベルトの範囲ならば健康影響の心配がないとしており、今回は、この基準で最も低い20ミリ・シーベルトを適用した。基準の緩和は一時的で、将来的には、1ミリ・シーベルトに戻す。

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