佐藤優によるトランプ現象についての分析

「新自由主義は個人をアトム化してバラバラにする、新自由主義には、経済主体が行動するにあたって、障害になる規制を全て除去するという「排除の思想」が組み込まれています。さらに新自由主義のゲームのルールでは、市場で勝利したものが成果を総取りできる。その結果、グローバル資本主義のもとら資本主義は巨大な格差を生み出し続けることになったのです。
一方、貧困層が増えて個人がバラバラになると、民族や国民としての連帯感がうすれ、国民統合を内側から壊しかねない。生活不安の矛先が国家に向かい、国家の、徴税に支障をきたす。こうして国家が弱体化していきます。そこでグローバル化で生じる危機に対抗するため、再び国家機能の強化が行われるわけです。
さらに、2001年の同時多発テロ事件や2008年のリーマンショクを経て、アメリカの覇権が弱体化すると、各国が露骨な国益を主張する群雄割拠の帝国主義に突入しました。ただし、現代の新帝国主義はコストのかかる植民地を持たず、全面戦争を避けようとする点で、かつてとは異なるのです。
こうしてみるならば、現代は新自由主義と新帝国主義が同時に進行している時代と捉えることができるでしょう。
アメリカ大統領選で、トランプが支持を集めた背景を的確に理解するためには、こうした大局的な歴史理解が欠かせません。」

佐藤優著『大国の掟―「歴史×地理」で解きほぐす』 (NHK出版新書 502)

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