チリ建国200年祭展示会28日、早稲田大学理工学部で開催中のチリ建国200年祭展示会を見学し、『ラテンアメリカの建築の可能性』というタイトルのフォーラムを聴講。チリで活躍する二人の建築家クリスティアン・ボサ氏(サンセバスティアン大学)、アルベルト・タイディ氏(サンセバスティアン大学)、日本からは石山修武氏と難波和彦氏、それと石山修武氏の研究室で学び、今回の展示会を企画・製作したチリ出身の建築家アベル・エラソ氏によるそれぞれの作品のプレゼンテーションの後、会場からの質疑応答が行われた。チリがどのような政治・経済の状況にあるのか、ほとんど知識はなく、クリスティアン・ボサ氏のプレゼンは遅刻して見れなかったのだが、アルベルト・タイディ氏のプレゼンと、ボサ氏のプレゼンで発表された作品の写真を見る限り、チリの現代建築にも、あまり希望を持てそうにない。石山さんのプレゼンテーションで、チリと日本というこのイベントのテーマに即して、岡本太郎が、ラテンアメリカに非常に興味を持っていたことが紹介されたのだが、タイディ氏とボサ氏が紹介した自身の作品は、むしろ、その対極にある。ヨーロッパの建築家が設計したといわれてもわからないほど洗練された美しさを持ったモダンデザインの建築ばかりで、岡本太郎が興味を持ったはずのラテンアメリカ的な要素は、ほとんど見当たらない。ボサ氏はロンドンのAAスクールへ、タイディ氏はイェール大学へと留学した二人の経歴を見れば、むしろ、この二人のチリ人建築家はチリへのヨーロッパ文化の輸入を請け負っている立場にいるといった方がいいのかもしれない。二人の作品は、現代のチリの建築文化のグローバリズムを象徴してしまっている。いずれにしても、チリにおいて、国家と、おそらく彼らの設計した豪邸のクライアントでもある富裕層の”近代化”を象徴するものとして、ヨーロッパ文化を学んだ”建築家”のデザインが必要とされている現実があるのだろう。日本とチリ、というこのフォーラムのテーマに沿って言えば、図らずも、明治期に、日本の建築を近代化するために”建築家”という職業が作り出されたことと、現代のチリの建築文化の状況とが重なるのかもしれない。
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