ラッセル=アインシュタイン宣言(バートランド・ラッセルのポータルサイト)
水爆戦争になれば大都市は消滅するだろうことは疑問の余地がない。しかしこれは、私たちが直面しなければならない小さな悲惨事の1つである。仮にロンドン、ニューヨーク、モスクワのすべての市民が絶滅したとしても、2、3世紀のあいだには世界は打撃から回復するかもしれない。しかしながら今や私たちは、とくにビキニの実験以来、核爆弾はこれまで想像されていたよりもはるかに広範囲にわたってしだいに破壊力を拡大できることを理解している。
ごく信頼できる権威筋によると、現在では広島を破壊した爆弾の2,500倍も強力な爆弾を製造できるとのことである。もしそのような爆弾が地上近くまたは水中で爆発すれば、放射能をもった粒子が上空へ吹き上げられる。そしてそれらの粒子は’死の灰または雨(いわゆる「黒い雨」)’の形で徐々に落下してきて、地球の表面に降下する。日本の漁師たちとその漁獲物を汚染したのは、この’死の灰’であった。そのような死をもたらす放射能に汚染された粒子がどれほど広く拡散するのかは誰にもわからない。しかし最も権威ある人々は一致して水爆による戦争は実際に人類に終末をもたらす可能性があることを指摘している。もし多数の水爆が使用されるならば、全面的な死滅 -即死するものはほんのわずかだが、大部分のものは長い間病気の苦しみを味わい、肉体は崩壊してゆく、という恐れがある。
有名なラッセル=アインシュタイン宣言は、1955年に当時の第一級の科学者ら11人らが、米ソの水爆実験競争という世界情勢に対して核兵器廃絶・科学技術の平和利用を求めた訴えである。
いうまでもなく、核戦争の恐怖について書かれているのだが、今、この宣言を改めて読み直してみると、核兵器の爆発による直接的な被害よりも、むしろ爆発後に広範囲に拡散していく放射能の危険について強調していることがわかる。
そして、この宣言で訴えられていた放射能拡散による危険は、皮肉にもこの宣言文で訴えられた科学技術の平和利用といわれる原子力発電所の事故によって、今もたらされている。
100万キロワット級の原子力発電所では、広島を破壊した爆弾の1000倍もの放射性物質を一年間で生成するといわれている。
これらの放射性物質が、今なお、福島第一原発から漏洩し続けている。
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