沖積層と階級

関東地震の震害分布と復興調査の結果は、すでに述べたように、泥質または泥炭質の沖積層の厚いところほど震害の大きいことを明示したのであるが、その後の東京の発展の歴史はこのような地盤の良否が知れてしまった故かどうか、地盤が悪く、したがって地価の安いところほど家屋が密集し、あるいは工場の敷地となった。現代の東京では、”過密地ほど地盤が悪い”と言い直すべきであろう。こうして、洪水、高潮、地盤沈下、震害あるいはそれに起因する火災など地盤に関係ある災害を受ける素地は十分に整ってきたということが出来る。
これらの災害を受けやすい土地は、ほとんどが沖積地であり、その中でも低い土地である。そして、このような低地の多くが軟弱地盤の土地であるから洪水や高潮の起こりやすいところは震害も起こりやすいのである。

貝塚爽平著『東京の自然史』p234

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