静岡県は10月22日、静岡市内の舞台芸術公園にある屋内ホール「楕円堂」など4施設で、主に屋根材として使っていた天然スレートのはく離や亀裂が2008年に相次いで見つかっていたと発表した。ほかの3施設は、野外劇場「有度(うど)」と稽古場棟、研修交流宿泊棟。いずれも磯崎新アトリエが設計した。住友建設(会社名は当時)などが施工して、1997年6月に完成した。楕円堂の外観。舞台と客席が一体の楕円空間となっている(写真:静岡県)県は10月19日、JR東静岡駅前にある県の複合施設「グランシップ」で、外装材として用いた天然スレートの落下事故が最近5年間で計40件起きたことを明らかにしたばかり。グランシップも同アトリエが設計。98年8月に完成した。
磯崎新が設計したグランシップなどの施設で、天然スレートの落下やはく離や亀裂が見つかったことが問題になっているようだ。88年に開館したハラミュージアムアークの黒の杉板張りや、90年代前半の作品であるラ・コルーニャ人間科学館や奈良の百年記念館などの石を用いるなど、磯崎さんのここ20年くらいの間の作品では、石や左官などの自然素材や地場産業を生かした建築材料を積極的に用いられている。しかし、鉄やガラスといった工業製品とは違って、自然素材は、性能にバラつきがある。磯崎さんが手がけるような大規模な建物で自然素材を用いれば、それら一つ一つに監理の目をいきわたらせるのは、難しい。今回、磯崎さんが手がけた4つの施設で、事故や亀裂が見つかったことで、記事は、磯崎アトリエの設計ミスが原因であるかのように書かれているが、ほとんど建物では、メーカー保証の付いた工業製品だけで組み立てられてため、事故の可能性が低いだけのことだ。こういう問題が起こったことで、ますますメーカー保証のついた工業製品だけで建築が作られていく傾向に拍車がかかることにならないか心配だ。
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