野武士世代の退官

鈴木博之さんが今年度で東京大学の教授を退官される。また、芸大では、六角鬼丈さんも。鈴木博之さんは、1945年生まれの建築史家。六角鬼丈さんは、1941年年生まれの建築家である。同じく1941年生まれの安藤忠雄は、すでに2003年に東大の教授を退官されている。また、石山(修武)さんは1944年生まれ、藤森照信は1946年生まれだから、あと数年後には退官になる。槙文彦は、この世代が特定の君主(師匠)を持たなかったことにひっかけて、「野武士世代」と呼んだのだが、野武士世代もその後エスタブリッシュされ、何人かは大学の教授になり、そして今その任期も終えて、退官しようとしているわけだ。僕個人としては、この特に世代から大きな影響を受けているのは間違いない。ただ、野武士世代が大学で多くの学生を教育したことが、どれくらい建築の世界に影響を及ぼしているのだろうか。80年代から現在に至るまで、ポストモダンの時代であり、70年代にデビューした野武士世代が持っていたような批評精神は失われてしまった。すくなくとも現時点では70年代にあった批評精神が現代の若い世代に受け継がれている様子はない。野武士世代が大学から去った後、大学にはポストモダン世代の建築家や建築史家が大学に入ることになるだろう。すでに、建築メディアは、完全にポストモダンで埋め尽くされているが、これからはいよいよアカデミーもポストモダンに制圧されることになる。そもそも、野武士とたとえられるように、この世代はアウトサイダーとして活動を開始している。とすれば、大学という権威的な場所に野武士たちが行ったこと自体に矛盾があったのだろうか。あるいは、野武士たちが教育した学生はまだ若いのだから、彼らが大学で取り組んだ教育の成果は、これから芽吹くことがあるのか。

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