出版不況と「建築」

Before- & Afterimages:出版不況出版状況クロニクル田中純氏のブログに出版不況について書かれている。出版社に勤める知人から、出版社の経営が下降気味である、と聞いたことがあったが、こういう形で、再び同じ話題を聞くと、いよいよこの話題に注目が集まり始めているのかな、という気がしてくる。以前、建築と建築雑誌との関係について書いたが、芸術としての「建築」にとって、建築雑誌はとても重要な役割がある。建築物は地面に固定されるため、実物の建築を情報として流通させることはできない。芸術としての「建築」が情報として流通し多くの人々に伝達されるためには、書籍や雑誌などのメディアを経由する必要がある。それゆえに、芸術としての「建築」は、実物の建築よりも、むしろ書籍や雑誌のメディアの性質に大きく規定されることになる。現代の有名建築家の多くが、著書を多数出版していたり、彼らの設計した建物の平面図が、実体の建築物の平面構成を示す以上に、それ自体で見事なグラフィックを描いていたりするのは、現代建築が情報として流通するプロセスと関係がある。また、建築雑誌に掲載された建築写真を観たり、文章を読んだりして、興味を持った有名建築家の「建築」作品を、実際に観にいった時、期待していた印象と実物が違って幻滅する、という経験を持っている人も多いのではないか。それは、芸術としての「建築」が、建築雑誌などのメディアによって大きく規定されていることを示すいい例だろう。実物の建築が、いかにひどいものであっても、建築雑誌に掲載される写真や文章に、芸術としての「建築」として認識させる効果さえあれば、それは芸術としての「建築」として、流通させられる。「出版クロニクル」の統計には、建築雑誌の出版業界の状況について、なんのデータもないので、推測するしかないのだが、出版業界全体の不況に加え、現在の建築不況にも影響をうけることを踏まえれば、建築雑誌の発行部数は減少傾向であると、予想できる。そしてもし、建築雑誌が衰退するようなことがあれば、それによって規定されてきた芸術としての「建築」も衰退していくことになる。前回の建築とメディアの関係について書いたエントリーで、芸術としての「建築」にも”恐慌”が来るのではないだろうか、と書いたが、その恐慌は、建築雑誌の衰退という形で意外とすぐそこまで迫っているのかもしれない。。。。。

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