「住宅政策を大転換する」、民主党・前田武志座長こちらでも民主党の住宅政策について、話題になっている。高速道路の無料化、脱ダム、リフォームなど、民主党がやろうとしていることを、一言で言えば、もう建築・道路などのインフラを新しくつくらない、ということだ。僕が、修行時代に担当した物件は、島根県の人口二万人程度の町の客席600席の多目的ホールと蔵書10万冊の図書館の複合施設で、1999年に開館した。坂倉準三が設計し、1951年に開館した神奈川県立美術館は、初めての県立美術館だったらしい。90年代の公共施設は、それまで整備が遅れていた地方に建設される場合が多く、それ以降、あまり公共施設が建設されなくなった。つまり、1951年に始まった、地方の公共施設整備が、半世紀を経て、日本全国に行き渡ったということになる。さらに、今は、少子化の時代だといわれている。人口が減れば、それまで整備された建築物の利用率は、減る傾向になる。こんな時代の状況を素直に見据えれば、新しく建築や道路をつくる必要はないだろう。相変わらず、建築や道路が必要としたのは、利用者ではなく、それらを作ってきた建設業者たちだ。需要は、簡単に減ったり増えたりできるが、それを供給する労働者は、簡単に減らすことはできない。だから、需要が減った時代でも、建設業界の労働者に支えられた与党の政治家たちは、彼らに予算を配分し、建設業界を養ってきたということではないだろうか。しかし、今回の政権交代で、そのしがらみもなくなった。むしろ、新しく政権をとった勢力からすれば、建設・土木業は、これまでの与党の政治家が抱えてきたしがらみの象徴として、格好の批判対象になる。民主党の政策は、 その結果として、作られたものといえる。もちろん、建築を設計してきた建築家の職能も、こんな世相の影響を受けせざるを得ない。
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