流通機構変革の手段としての兼業農家

これまでの歴史を振り返って見ても、良い政府を作ろうとして革命を起こしても、新しい革命政府がもっと悪い政府になってしまった例は枚挙に暇がない。より良い社会を作るための革命など、長期的にはナンセンスであることがわかるだろう。
より良い社会を作るためには、新しい文明を作るのではなく、文明を放棄しなければならない。文明を放棄し、権力に風穴をあける方法はただ一つしかない。それは、権力に余剰食糧を供出しないことである。また、権力から食料を受け取らないでも生活できるようにしておくことである。これは、食料の家族自給によって可能となる。
家族自給とは家庭料理の延長である、と考えた方が良い。鍋釜に入れるところから家庭料理になるのではなく、鍋釜に入れるものをつくる所から家庭料理だと考える。つまり、権力としての流通機構に風穴を開けるといったところで、そんなに過激に突拍子もないことをするわけではないのである。「今後、当分の間(石油文明が終わるまで)兼業農業者になりましょう」ということだ。
なぜ兼業化というと、基本食料が自給できたとしても、この石油文明では、食料だけでは社会生活が出来ないからだ。子供の教育にもお金がかかる。したがって、どこかに労働を売って、現金収入を得なくてはならない。だから兼業農業をすることになる。
槌田敦『エントロピーとエコロジー』p169

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