土のなかの水の状態には、大きく分けて、地下水、毛管水、懸垂水の三種類がある。一番下にあるのが、水を通さない岩または粘土。その上に地下水(隙間の全部に水が置き換わったものである)。その上が、毛管水である。毛管水は、細い隙間に沿って地下水と繋がっている。しかし、太い隙間には空気が入っている。毛管水は、砂地で約30センチぐらい、腐植の多い土では約3メートルぐらいになる。
毛管水の上の土に、もしも水分がなければ、植物は育たない。特に、地下水の深いところでは、毛管水も深いところにある。ところが、土の中には水は、重力で下方に引っ張られて入るけれども、腐食との親和力で、小さな隙間にぶら下がってい存在することも出来る。これを懸垂水という。この水があるために、地下水が深くても土に水気が残り、植物が育つのである。
土のなかの水の流れは、水循環にとって大切な働きをする。もしも、土に一切の保水力なかったら、地上に降った雨は直ちに海へ流れ去ってしまう。雨の直後の洪水であり、晴れが続けば陸には水がなくなってしまう。
しかし、水に保水力があるから、懸垂水、毛管水、地下水として蓄えられ、重力で徐々に下方に流れ、ある場合は湧き水として地王の姿を現し、川となって、海へ流れる。土の保水力が大きければ、少々の雨で洪水になることはない、したがって、いつも同じ水量で川の水が流れることになる。
ところで、土の中の水の流れは上から下に向かうだけではない、下から上へ流れる水もある。蒸発と蒸散である。地下水や毛管水や懸垂水は、地表から絶え間なく蒸発し、地表の熱エントロピーを処分している。厚いときは蒸発量が多く、寒いときは少ないので、地表の温度調節にも役立っている。世界中で平均すれば、陸地に降った雨や雪のうち、約60%は陸地で蒸発し、再び雨の原料になっている。海へ流れていくのは約40%である。
槌田敦著『エントロピーとエコロジー』p78
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