温帯性果樹の二大中心地

A 西部原生種群
(欧州束南部、西アジア、ペルシア)
1 革 果(リンゴ)Malus pumila
2 洋 梨    Pyrus communis
3 甘果桜桃   Prunus avium
4 酸果桜桃   Prunus cerasus
5 欧洲李    Prunus domestica
6 欧洲李    Prunus insititia
7 欧洲栗    Castanea sativa
8 アーモンド  Prunus communis
9 欧洲葡萄   vitis vinifera
10 無花果    Ficus carica
ll メドラー   Mespilus germanica
12楷枠(マルメロ)Cydonia oblonga
13胡桃(クルミ)Jugulans regia
14 石榴(ザクロ)Punica granatum
他に須具利、房須貝利、木苛、榛

B 東部原生種群
中国(朝鮮、日本を含む)
1 中国梨    Pyrus ussuriensis
2 日本梨    Pyrus serotina
3 山桜(サンザシ)Crataegus pinnatifida
4 桃      Prunus persica
5 日本李    Prunus salicina
6 杏(アンズ) Prunus armeniaca
7 梅      Prunus mume
8 甘 栗    Castanea monisima
9 日本栗    Castanea crenata
10 柿    Diospyros kaki
11 東(ナツメ)Zizyphus sativa
12 枇 杷    Eriobotrya japonica
13 柑橘類    Citrus spp.
他にワリンゴ、中国桜桃
菊池秋雄(1948)

この表をみると直ちに明らかになることは、現在の温帯性果物のほとんど全部がこの表の中に含まれていることである。この表がこのような簡単な形にまとまるまでには、多くの植物学者の研究の結果がある。例えばモモは学名はプルヌス・ペルシカとなり、ペルシア原産と初めは考えられていたが、中国原産(険西、甘粛)であることがその後判明した。同じくアンズはプルヌスーアルメニアーカという学名で、アルメニア原産と初めにされたが、それも中国原産であることが判明した。カキはデイオスピロスーカキ(日本語からとった)、ビワはエリオボトリアージヤポニカであるが、両者ともに中国揚子江付近の原産とされている。
 温帯性果樹がこのように、はっきりした二つの群れに分けうるということは何を意味しているのであろうか。西部原生群の果樹は、東欧、西アジアに起源し、西アジア、ギリシア、ローマ、西欧と文明の中心地が変遷しながら、果樹の改良が続けられて、今日のすぐれた品質になったものである。それは全く、西洋文明、西洋文化の発達変遷そのものである。これに対して、東部原生群の果樹は中国文明の中に生まれ、その中で育ち、発展してきたもので、朝鮮、日本までを含んで、それは全く中国文明、中国文化がつくりあげたものである。
 東部原生群と西部原生群の二つのグループの果樹を公平な目で比較してみると、それはだいたいその価値として相等しいとみてよいだろう。このことは果樹に関しては中国文化は独力で、全西欧と匹敵する成果をあげたことを意味することと言えよう。中国文化がこのように、全西欧の文化に対等なものとなっているのは、この果樹についてはきわめてはっきりした事実である。
中尾佐助著『料理の起源』p200

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