土の性質-物理的性質、化学的性質、微生物的性質

土の性質(『土壌の基礎知識』前田正男、松尾嘉郎共著・農文協刊より)ここからわかるように、複雑な土の性質を分けてみると、物理的性質、化学的性質、微生物的性質に分けることができる。『土壌の基礎知識』によれば、物理的性質とは、土の堅さだとか、水はけの善し悪しだとか、通気性などのことをいい、化学的性質とは、土がアルカリ性や酸性になることや、鉄やアルミニウムの多い土は作物にリン酸が吸収されにくいなどのことをいい、微生物的性質とは、畑に施したアンモニアが硝酸に変化することや、水田に水を張ると作土が酸素不足の状態(還元)になることなどをいう。土の地力だとか、肥沃度というのは、これら三つの性質が単独で、かつ互いに絡み合って高まった結果だということになる。例えば、土が作物のとれにくい酸性のときどうするか。土が酸性になったとき、この酸性を改良するためには石灰肥料を施すのがよいのだが、しかし半面、土中に石灰分が入ると微生物の活動が高まり、有機物の分解が促進される。そのこと自体は作物によい影響を与えるのだが、堆肥を多く施さないとやがては地力が低下していくことにもなる。しかし、今度は堆肥の施用量が多くなってしまうと、マンガンや鉄が不溶性となって作物への吸収が悪くなる、という。土とはつまり、これらの性質が複雑に絡み合って、常に生成変化を続けるダイナミックな働きのことだといえるだろう。文学的に、土を「大地が」などといって固定的なイメージに閉じ込めることは、だから土の本質といかにかけ離れた誤った物の見方であるかが理解される。それは、土の変化する「時間」を捉え損なった認識、その初歩的なミスであるといえる。

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